庄内地方のさくらんぼ事情……その1
山形県がサクランボ産地になったのは?
サクランボは明治時代に導入され、山形県がその育成適地として生き残った。過去サクランボの日本導入期に全国で実験栽培(明治維新の進取気質)したが、山形県以外はほぼ全滅した経緯がある。
サクランボは栽培がとても難しい作物であり、その栽培条件はいくつかポイントがある。
それらの条件をすべて満たしているのが、山形県であり、サクランボの一大産地となった。
- 水はけのよい土壌である事・・・(粘土質では駄目)
- 冬は寒くなければならない・・・(摂氏7度以下の寒さに約2か月晒さないと花芽が出ない。摂氏4度を超えると花芽が膨らみだす)
- 冬夏の寒暖差がある方が良い。
- 昼夜の寒暖差がある方が良い・・・(美味しくなる)
- 日当たりが良い事・・・(色づきが良くなる)
- 西日を嫌う(東向け斜面の方が良い)
以上が最低条件。
ちなみに山形県の平均的な気候は、
降水量 1190mm
年平均相対湿度 62%
年平均気温 14.7℃
それらのがクリアされたうえで、考慮しなければいけない障害がある。
- 遅霜対策・・・・・(花芽が凍り雌蕊が死んでしまうと結実しない)
- 梅雨対策・・・・・(雨が当たると果肉が割れる)
- 台風対策・・・・・(収穫期に台風が直撃すると収穫が出来なくなる)
- 強風対策・・・・・(サクランボは浅根性、強風で倒木の可能性あり)
- 病虫害対策・・・・(桜の仲間なので病気や害虫に弱い)
- 鳥獣害対策・・・・・(赤い色の果実は鳥に食べられやすい)
①土壌
山形県の河川と平野の分布をみてほしい。
庄内平野は米どころ……当然水田に向いた堆積平野であり粘土質である
山形盆地・米沢盆地……盆地中央は堆積層もあるが、河川上流の扇状地が多い
最上地区…‥‥丁度最上川がカーブする辺りで、ここは堆積平野と言うよりは湿地に近く、明治以降の土壌改良がなされるまでは小舟によって田植えをしていた時期もあるほどである。
ただ、堆積平野であれ湿地であれその山際の端っこは扇状地であることから水はけのよいサクランボ栽培に向いている東向きの斜面は山が多い山形県には多数存在する。
②冬の寒さ
当然のことながら、雪国の山形県は冬は寒い。県内全域がこの条件をクリアしている。
③夏冬の寒暖差
長く日本の最高気温記録を保持していたのが山形市、県内全般にこの条件をクリアしている。
④昼夜の寒暖差
山形県では全般的に、真夏日になったとしても、熱帯夜になる事は稀。この条件もクリアしている。
⑤日当たりが良い事
山の斜面である事などから日当たりは良い。
庄内地区の方がやや有利な条件と言える。
⑥西日を嫌う
盆地では東向きの斜面であれば条件を満たす。
庄内地方は西側の日本海に向けて開けている平野なので、やや西日の影響を受けやすい。
⑦遅霜
盆地では昼夜の寒暖差があるため、遅霜の被害にあいやすい。
庄内平野は海に近い分だけ、やや寒暖差が少ないのでそのリスクはやや低い
⑧梅雨
山形県全般に、関東の様な梅雨はない。やや雨天の日が増える程度である。
⑨台風
山形県全般的に、サクランボの収穫期に当たる時期に台風が直撃することは殆どない。
有ったとしても夏の終わり頃しか直撃しない。
⑩強風
盆地では強風は吹かない。庄内平野ではかなり強い風が吹く。
庄内砂丘では風よけの為の防風林もあるし、風力発電も行われている。
庄内地方のサクランボ農家では、樹高を低く育成したり、風よけハウスを強化するなどして対策している。
これらの条件を考慮すると、庄内地方も置賜地区に勝るとも劣らない条件がそろっていると言える。
まとめ
サクランボの産地として、山形県全般的にその栽培条件を満たしていると言える。
特に庄内地方に限って言えば、
- 山際の扇状地ではサクランボ栽培に向いている土地もある。
- 日照時間が長く、サクランボが色よく美味しく育成できる。
- 遅霜の被害に会いにくい。
- 梅雨や台風の影響を受けづらい。
- 強風が障害になるが対策もしている。
という事で、置賜地区に勝るとも劣らない栽培条件がそろっていることになる。
では、なぜ庄内地区のサクランボは全国的に有名ではないのか?
サクランボの意外な穴場産地である庄内平野。日本中の消費者の中で目ざとい人は注目している話がちらほら出始めているが、サクランボと言えば「寒河江産」と言う認識になってしまっているのも事実。
では、なぜそうなったのか?
については、次回に解説する。